皆様こんにちは、自称「ハイドロ部長」の原でございます。
最近では、めっきり秋らしくなり夏男の僕としては朝が辛くなりつつあります・・・
皆様におかれましてはどの様にお過ごしでしょうか?
なかなか更新されない「ハイドロサスペンションて何だろ・・・?」ですが、今回(もしかしたら最終回?)はハイドロの構造的なお話しをさせていただきます。
第1回で「ハイドロは安全装置なのです」というお話しをしました。
さて、「ハイドロ」の語源ってなんでしょう?
「ハイドロニューマチック」は「hydropneumatique」と書きます。
「hydro」はギリシャ語源で意味は「水」「水力」、「pneumatique」はフランス語で「空気」とか「空気圧」の意味です。
つまり、ギリシャ語とフランス語が合わさって「hydropneumatique」になり、それを勝手に略して僕らは「ハイドロ」と言っているわけです。
ちなみにフランス語で発音したのをカタカナに直すと「イドロプヌマティク」っていう感じになります。
ぜんぜんハイドロじゃないですね?
この「ハイドロ」で使っているのは、実は空気でも水でもありません。
空気の部分は「窒素ガス」、水の部分は「LHM・LDS」と呼ばれる専用OILです。
ご存じの通りハイドロ車のサスペンションは一般的な金属スプリング構造のサスペンションではありません。
世間一般では、油圧サスペンションと考えられています。
僕たちも、細かく説明しないときは油圧サスと、簡単にご案内してしまいますが、これは正確なご説明ではないですね。
先ず、サスペンションの伸び縮みはスフィア内の窒素ガスが行います。
最初に路面からの衝撃を受けるのは窒素ガスなのです。
それではOILは?
これこそがハイドロの真骨頂で、OILはショックアブソーバーの役割と車高調整を担当します。
以前にご案内の通り、ハイドロサスは走行中路面の凹凸に関係なく車体を一定に保つように勝手に伸び縮みを行っています。
スプリングも同じような動きを演じるのですが、ハイドロは油圧を使って上下動を意図的に作り出します。
この「意図的」が独自の乗り味になるわけです。
ただ柔かい足回りが欲しいだけであれば柔かいスプリングをサスペンションに装備すれば良いのですが、どんなに柔かいスプリングとショックアブソーバーを装備してもハイドロの乗り味にはなりません。
かつての名車「ZX」や本国仕様の現行型C5のスプリングサスモデルは驚くほど軟いサスペンションですが、シトロエンが作っていてもハイドロの独自な乗り味にはなりません。
これだけ違いが歴然と出てしまう素晴らしいシステムなのですが、普通のスプリングとショックアブソーバーの組み合わせと比べると、どうしても複雑になります。
名車と呼ばれた「初代DS」「SM」「CX」などのハイドロ車はその時代の超高性能車でしたが、ハイドロの耐久性が仇となってしまい故障が多い車の代名詞になってしまいました。
しかし、それでもシトロエンはハイドロサスを作り続けています・・・
そしてその後「BX」「エグザンティア」などの名車が輩出されていきます。
1980年代終盤、この頃ハイドロ車にも時代の変化が訪れます。
大型ハイドロマシン「XM」の登場です。
この時代からハイドロもアナログ制御からデジタル制御に変化してゆきます。
この時代のハイドロは機械式制御「ハイドロニューマチック」を搭載していましたが、この新しい「XM」にはシトロエンのハイドロ技術の全てを注ぎ込みました。
電子制御のハイドロ、「ハイドラクティブ」の誕生です。
車体各所にも電気的なギミックを多く搭載して話題の車でしたが、電子制御ハイドロの「ハイドラクティブ」は大きな話題となりました。
ドイツ車を代表して車が飛躍的に高速化され、純機械式の「ハイドロニューマチック」では高速域の急激なレーンチェンジなど、横方向の動きに不満が出ており、それに合わせた進化が必要でした。
そこで電子制御を投入し、ハイドロの動きを飛躍的に向上させました。
ですが、初のデジタル制御だけに設計も手探り状態だったのでしょう。
残念ながら故障が多発し、開発途上の電子制御だけに謎の故障もありました。
話は大きく反れますが、この「XM」には未だに沢山のファンがいらっしゃいます。
もちろん独特のデザインも手伝っているとは思いますが、オーナーの方々は口々に語ります。
「XMってさぁ1年のうち1ヶ月くらい調子が良いんだよねぇ、後の11ヶ月は修理か具合悪いかでさぁ・・・、でもね、絶好調の1ヶ月間はホントにたまらないくらい良いんだよなぁ、その1ヶ月間の為だけに調子悪い11ヶ月間は我慢しちゃうんだよねぇ」
と、知らない人が聞くと「何言ってんだ この人は?」となるわけですが、この時代のシトロエンオーナーはやはり根性というか忍耐力が違いますね。
現行のシトロエンはそこまでの根性は必要ないのでご安心ください。
さて、話は戻ります。
「XM」でもかなり苦労したシトロエンですが、引き続き「ハイドラクティブ」を作り続けます。
そしてエグザンティアの後期型にも「ハイドラクティブⅡ」が搭載されるようになり、この頃には謎の故障は少なくなっておりました。
そして現在の完成系ハイドロである「ハイドラクティブⅢ」を初代C5に搭載します。
ブレーキサーボとパワーステアリング系統を分離し、ハイドロの重要パーツである「スフィア」を7つも装備した豪華絢爛なハイドロ車です。
ハイドロを比較する話で、古くからのハイドロファンはハイドロニューマチックは自然で柔らかいのでこちらの方が好き。
そしてハイドラクティブは硬くてダメと評価されます。
これは好みの問題なのですが、もちろん高性能なのはハイドラクティブです。
硬いと評価されるのは、反応速度が機械式より数倍早く反応するので「硬く感じる」だけなのですね。
実際の高速道路の長距離走行の疲労感はハイドラクティブの方が少ないですよ。
高性能なハイドラクティブですが、世界的にもハイドロニューマチックの乗り心地を求める声が大きいようでシトロエンは考えました。
その答えがフランス大統領就任式にシラク大統領が乗ったことで有名な最上級サルーン「C6」です。
長大なホイールベースと斬新なデザインで話題となりました。
皆さんのご記憶にも新しい車ですね。
この「C6」に搭載したハイドラクティブが非常に憎い演出をします。
まったりとした乗り心地はハイドロニューマチックのような動きをし、急制動時などにはスポーツカー並みの硬い足回りに変化します。
この微妙な制御のハイドロシステムは現在もC6のみ装備されています。
ちなみに現行の1.6LターボのC5もC6に迫る性能を見せます。
世の中の車が固めの足回りを好む中、C5のハイドロサスペンションは柔らかでしなやかな足回りを演出します。
C5の戦闘的な雰囲気と大柄なボディーは一見ドイツ車のようにも見えて、硬い乗り心地をイメージしがちですが、初めて試乗された方は見た目のイメージとの違いにビックリされます。
現在、国内で新車を購入出来る唯一のハイドロ車はC5のみとなっています。
少々昔風の味付けをしたハイドラクティブは、往年のハイドロユーザーの方も納得された顔で試乗されています。
横幅があるためボディサイズが合わずに断念される方も少なくはないですが、皆様こぞってC5のハイドロを褒めていただいてます。
なにもハイドロサスペンションは「シトロエン好き」の為だけの装備ではありません。
かつての国産車(真四角だったころのクラウンやセドリック)に乗っていたベテランドライバーの方々にはうってつけの一台になります。
車がステータスシンボルだった頃の高級車達は「お座敷」として作られてました。
内装や足回りは、緩やかで落ち着く雰囲気があり現在の車では無い物をもっておりました。
そんな時代を懐かしむユーザー様には是非乗っていただきたい車がC5です。
必ずお気に入りになることと思います。
今回の「ハイドロサスペンションってなんだろ・・・?その3」はかなりの長文になってしまいました
語り始めるとキリがないのがハイドロサスペンションです。
シトロエンは決して敷居は高くないですから色々な方に乗って頂きたいですね。
ハイドロ車に乗りたいけど不安だ・・・とか、本当にシトロエンて大丈夫なの?
などなどのご質問には責任を持って「ハイドロ部長」がお答えしますので是非是非お店までお越しください。
これにて「ハイドロサスペンションってなんだろ・・・?」は終わりにさせていただきます。
次回のお話しは何にいたしましょうか?